original [永続の記憶] [05] 「―改変黙示録―」


5.カルトネの秘密

会議室の数少ない格子窓から見える、暗雲。たまに遠くから鳴り響く雷の音。
会議室には、カルトネと姫巫女の姿があった。

「それで、上手く進んでいるのかしら?
…って、訊く必要もないくらい順調に進んでいるようね。」

姫巫女は、薄っすらとあざ笑うが如く微笑むと格子窓の向こうの景色を眺めた。
もはや、外の世界は人が暮らせる状況ではなかった。

マナの流れを止める泥水、毒の泉、人の営みを感じられない荒れ果てた無数の廃墟、見る事を許されない蒼天。

「安心なさいな、こんな状況になっているのは、ここだけ。
まぁ、大地の枯渇は、北の魔族の領域まで達しているから、彼らの生活は、少々大変なものでしょうけど。
この間の会議、ティノスも随分と悩んでいたわね。」

カルトネは、黙り込んだままだった。
それでも、犠牲にしてでも守らなければいけないものがあった。

「貴方のお姫様の為ですものね。我慢してもらわなければ、困るものね。
大地のマナは、確実にこの城へと蓄えられているし、術式も完璧。
これを人の身に当てれば、あらゆる呪いを弾く事が出来る。レティシアも城の呪いから解放されるわ。
国としては、死んでしまうけれども、貴方が望んだのだからもう後へは引けないのよ?ふふ…。」

大地のマナを枯渇させ、人々の暮らしを脅かした。
カルトネ=ラッテルは、この世界に巡る、人が触れては、いけない大地のマナに手を出していた。
姫巫女は、大地のマナを吸い取る仕組みや蓄える術式、それに必要な魔力を提供していた。



ある時、カルトネは姫巫女に尋ねた。

『ここまでして…見返りは、なんだ…?』

そして、姫巫女は答えた。

『願わぬば、祝福を―。願わくば、世界に終焉を―。』



今している事は、今まで結界によって守られていた国を解放してしまう事に繋がる。
それだけではなく、今の世界のサイクルに多大なダメージを与えるものだった。
妻はもう救えないが、せめて娘だけは救いたいとカルトネは、願っていた。

愛しい娘レティシアには、人の営みの輪の中にいて欲しいと願っていた。
呪いのせいで、その機会を得られず、寂しそうに窓の外に映る年頃の娘たちを見ていたが、親の前では平気そうな顔をする。

親からしてみれば、それは寂しく、あまりにも自分が無力に感じられた。
こんな時、母親がいれば柔らかい胸に我が子を抱き寄せ慰める事もできたはずだというのに
母親である妃も呪いが最終段階に入ってしまい、産まれる子が先か、母体が死を迎えるのが先か、分からない状態で安静を余儀なくされていた。




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